算変座標の基礎(3)

和算

これは2025年10月の論文です。

  松山大学論集 第37巻第4号, (2025) pp.79–129.

論文の最初の「はじめに」の部分を引用して論文紹介とします。

 算変座標は論文「算変法不変式がつくる座標系について」で導入した円の幾何学における座標系である。その座標系における主要な公式は,算変座標が与えられた有向円の符号つき半径を計算する半径公式と,算変座標が与えられた2つの有向円の相互の反転距離を計算する距離公式である。

 半径公式は論文「算変法不変式がつくる座標系について」で導入後,論文「算変座標の基礎(1)」でより扱いやすいように公式の見直しを行なった。証明は六斜術に反転距離の定義式を代入して整理するだけの単純なものであるが,見直しを行なったとはいえ公式は10変数からなる複雑なものであった。また,基準3円の中に直線が含まれる場合は別定理とする必要があった。

 距離公式は論文「算変法不変式がつくる座標系について」では証明なしで定理だけを述べ,その応用を紹介した。その証明は,\(\sigma > 0\) の場合を「算変座標の基礎(1)」で行い,\(\sigma < 0\) の場合を「算変座標の基礎(2)」で行なった。場合分けが多く長い計算を必要とする証明であった。また,距離公式も半径公式と同様に10変数からなる複雑なものであった。

 愛媛和算研究会で安島直円の廉術について解説をする機会があり,半径公式は半径の逆数の曲率で表した方が廉術の説明において便利であることに気がつき,半径公式を変形した曲率公式を作り,その公式を用いて廉術についての解説を行なった。半径公式と曲率公式の大きな違いは,半径公式では半径が無限大となる直線を扱うことができないのに対して,曲率公式では曲率を 0 とするだけで直線を直に扱うことができる点にある。曲率公式の方が半径公式より応用範囲が広く有益な公式である。

 しかしそこに大きな落とし穴があった。円の符号つき半径を \(r\),符号つき曲率を \(k\) とし,半径公式に \(r=1/k(k\not=0)\) を代入して曲率公式を作るのだから,当然その曲率公式は曲率が \(0\) となるときは証明できていないことになる。そのため曲率が \(0\) の場合を含む新たな証明が必要となった。

 曲率が \(0\) でない場合の曲率公式の導出は第2節にて行う。曲率が \(0\) の場合も含めた一般の曲率公式の証明はその後の第3節から第7節で行う。また,同様の方法で,距離公式の別証を第8節で取り上げる。論文「算変座標の基礎(1)」と「算変座標の基礎(2)」で苦労して証明した距離公式があっけなく証明されることとなる。第9節では曲率公式の応用として『算法助術』の和算公式を取り上げる。

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